第1479回例会 卓話「経営・ビジネス視点で見る農業の課題と可能性」(2025年10月27日)
- 2025年10月27日
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丸山侑佑様
《プロフィール》
経営学修士 ISO30414(人的資本開示)プロフェッシ
ョナル
2024年6月、公益財団法人農村更生協会が運営する八ヶ
岳農業大学校(旧・八ヶ岳中央農業実践大学校)の理事
に就任し、同年10月専務理事に就任。2025年4月より
同大学校校長に就任。
世界に誇る八ヶ岳で「農業×観光(アグリツーリズ
ム)」をテーマに新たな価値を生み出す10ヘクタール
100万株の広大な花畑「八ヶ岳ガーデンプロジェクト」
を6/14オープンさせた。
《「経営・ビジネス視点で見る農業の課題と可能性」》
現代の農業は、単なる第一次産業の枠を超え、経済・生態系・社会構造が交錯する複雑なシステムとして機能している。
気候変動の激化や資材価格の高騰、さらにはサプライチェーンの多様化といった要因が同時に進行し、これまでの「生産中心型」モデルではもはや対応しきれない時代に入っている。
経営の前提そのものが変わった今、農業はもはや「作る」だけの仕事ではなく、戦略的な意思決定を通じて価値を設計し、社会的課題を解決するビジネスへと進化する必要がある。
農業経営の難しさは、その構造的条件に起因する。第一に、天候や病害、政策、市場価格といった外的要因が経営全体を左右する。これらは互いに連鎖し、単独ではなく複合的な危機をもたらす。第二に、農業の PDCAサイクルを稼働させる期間の長さである。生物学的な諸所の制約により、結果の検証には年単位の時間を要するため、環境変化のスピードとの間に深刻なタイムラグが生じる。第三に、多くの農産物は市場で差別化されにくく、生産者は価格決定権を持たないプライステイカーに
なりやすい。この状況では経営の裁量が奪われ、コスト削減一辺倒の経営になりがちである。
さらに、土地や施設などの非流動的資産が多いため、戦略転換が遅れやすく、経営リスクの固定化を招く。これらの要素が重なり、農業は他産業とは異なる「複雑かつ不確実な経営システム」となっている。
こうした環境下で、従来の二つの専門性――すなわち「農業の専門家」と「経営の専門家」――はいずれも限界に直面している。
生産技術に特化した農業者は、品質向上に執着するあまり顧客のニーズを見失うときもある。どれほど優れた作物を育てても、消費者の体験価値や購買行動の変化を読み取れなければ、成果は限定的である。また、経験と勘に依存した判断は、再現性や拡張性を欠き、組織的な学習を妨げる。さらに、労働集約的であるにもかかわらず、人的資本マネジメントが軽視されることが多い。作業の意義や目的が共有されない環境では、モチベーョンが下がり、離職率が上昇し、結果として生産性が失われる。
一方で、経営知識だけを持つ者は、農業を工場のように捉え、現場の複雑適応性を過小評価しがちである。短期的な ROI や定型的な財務モデルを重視する発想では、季節性や高い固定費構造を持つ農業に適応できない。現場に存在する「経験知」と経営データとの間に深い断絶があるため、経営者はしばしば解像度の低い意思決定を強いられ、投資や改革に慎重になりすぎる傾向が生まれる。この二つの分断を乗り越えるためには、より実践的で本質的な「アグリ・マネジメント」が必要である。これは、農業を単なる生産活動ではなく、価値創造のプロセスとして再構築する考え方である。その本質は、生産量を増
やすことではなく、「何を、誰に、どのように届けるか」を設計する戦略的思考にある。
市場の構造、消費者行動、地域資源、ブランド価値などを総合的に捉え、供給主導から需要起点へと発想を転換することが求められる。特にマーケティングドリブンに事業を推進するにあたっては、消費者を知り、消費者目線で価値を創造し、生産現場のアタリマエに変化を起こしていく必要もある。ただ最大の課題は組織全体が消費者志向に変化できるかである。












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